春の滲み
2026.08.29
美しい春の中に、自分というインクを染み込ませた筆をそっと置いて、あたかも元々あったかのように染み込んでいきたい。
だがそれは名画を汚すような、そんな気がしてしまっている。
季節は廻る。
歳を数え上げるために、訪れる。
だけど春のことがいつまでも思い出せず、既に失われたように感じる。
あらゆる名画を搾り、筆をつけてみると、頭の中にじわっと広がり、鮮やかになる。
そこに私の色はなくて、魂のない彩りを見せられているような、どこか置いていかれるような、印象のない名画だ。
いつか私がその中に広がり、居れたなら。
そんなことを思うたび、春がとても攻撃的なものに思えて、怖くなるのだ。